電離放射線と健康:いま誰もが知っておくべきこと
著者:O.ティムチェンコ
典拠:北海道大学スラブ研究センター 2013年『スラブ・ユーラシア研究報告集』別冊
はじめに
福島原発事故から日本人は何を学び、何を次世代に残し、そして、どう世界に教訓とし て伝えるのでしょう。 福島後に生じている様々な現象や問題は、単に原発の廃止か推進かという個別的な問い に関わるものではありません。むしろ、科学技術と人間、人間と環境、政治と市民、地域 と世界、国際社会と国家、文化と心、といった近代社会全体に係わる問題群を鋭く我々 に突きつけているかに思えます。こうした問題群に大学や学術がどう応えるのか、そして日本 がどう対処するのか、世界も注視しています。 福島原発事故によって避難を余儀なくされている被災者は復興庁の調べで 15 万人に のぼります。また、政府や自治体が把握していない自主避難者が大勢います。避難所に 暮らす被災者の間では、将来の展望、バラバラに離散した家族、放射能被曝の影響など について、情報が不確実でありしかも乏しいために、見通しのつかないまま暗所を手探りす るような生活を余儀なくされています。その思いは、たとえ避難はしなくても、原発事故の 影響をこうむっている地域に暮らし続ける人々にとっても同じです。
福島に先立つこと25 年前、チェルノブイリで原発事故が起きました。当初は大きな衝撃 を受けたにもかかわらず、時間の経過とともに、ほとんどの日本人は同事故を他人事と考え るようになり、そこから教訓をくみ取ることはできませんでした。しかし、チェルノブイリを経験 した現地の人々は、その後の四半世紀、日々、原発事故の後遺症や放射線被曝の問題 と向き合って生きています。事故当時にチェルノブイリがあったソ連邦という国家はもはや存 在しません。深刻な被曝を経験した地域は、ロシア、ウクラナイ、ベラルーシに分かれ、被
災者達の運命も変わりました。 北海道大学スラブ研究センターでは、文部科学省による科学研究費研究助成を受けて、 2012 年度から「大規模環境汚染事故による地域の崩壊と再興:チェルノブイリ、アイカ、
フクシマ」(家田修研究代表、2012 – 2015 年)と題する共同研究を行なっています。チェ ルノブイリと福島の教訓を、世界と未来の世代に伝えるためです。基礎研究を旨とするのが 大学の使命ではありますが、現実的な問題解決に役立つ成果はすぐにも公表しようと方針 を立て、その第一号として本冊子を刊行することにいたしました。 著者のオルガ・ティムチェンコ博士はウクライナ科学アカデミーの衛生・医学生態学研究 所に長年勤務する研究者です。彼女の経歴などは、本文冒頭で博士自身が語っています
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ので、ここで屋上屋を重ねることはしません。本冊子を出版するに至った経緯だけを述べて おきましょう。
監訳者である家田は 2013 年 3 月にウクライナの首都キエフを訪れ、放射能研究関連の 研究施設をいくつか訪問しました。目的は、ウクライナにおけるチェルノブイリ研究を総合的 な視点からまとめ、日本に紹介することでした。ウクライナ科学アカデミーの衛生・医学生態 学研究所は、放射能の生態に対する影響の基礎研究で重要な役割を担っています。面 接に応じてくださった研究者の中で、中心的な立場にあるのがオルガ・ティムチェンコ博士で
した。 低線量被曝が今の日本人にとって非常に大きな関心事なっているので、是非とも、参考 になる論文を書いてくださいと彼女にお願いしました。オルガさんは「喜んでお引き受けしま す。ウクライナ人は日本人がウクライナの子どもたちを救ってくれたことに感謝しています。今 度は私たちがお返しをする番です」と快諾してくださいました。そして、5 月に送られてきた のがこの論文です。 ティムチェンコ論文にはチェルノブイリ事故後の四半世紀を生きてきたウクライナ人の生活と 歴史が凝縮されています。それは他に代えがたい経験であり、極めて貴重なものです。同 時に、そのまま全てを今の日本や福島の状況に当てはめることはできません。ティムチェンコ 博士も書いているように、放射能の影響を避けるためには、栄養のバランスがとても大切な 要素ですが、食生活は国や地域によって大きく異なります。今の日本の食生活は、ティムチェ
ンコ博士が想像しているような伝統的和食から、ファーストフードや既製品等の影響を強く受 けたものへと変化しています。とりわけ日本の若い世代の、海産物離れや野菜不足、総じ て言えば健康管理への無関心は著しいと言わなければなりません。また、甲状腺癌と同様 に、遺伝子の損傷が原因とされるアトピーやアレルギー、統合失調症などの患者が急増し ており、人々の免疫力が低下しているという事態も考慮しなければならないでしょう。 そうした日本の現状を踏まえて、日本人は日本人としての放射能リテラシ―(リテラシーと は、知識、理解力、実践力に基づく総合的な智慧のことです ) を築いてゆくことが大切です。 そのための第一歩として、先人であるウクライナのティムチェンコ博士の論文が水先案内の 役を果たしてくれると思います。 日本人のために、そして世界の次世代のためにこの論文を執筆してくださったティムチェン コ博士に心より感謝します。またこの場を借りて、在キエフ日本大使館勤務の宝川真純さ んにお礼を申し上げます。宝川さんから数年ぶりに届いたメールに「ウクライナの日本大使
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館に勤務しています。チェルノブイリ関連業務担当です。お役にたてることがありましたら」 と記されていたことが、本出版の全ての始まりでした。宝川さんに励まされ、私のキエフ滞 在中の研究所や原子力規制院などへの訪問調整でもすっかりお世話になりました。宝川
一家の温かい歓迎と御主人のグルジア料理は忘れられない思い出です。 本論文はもともとロシア語で執筆されました。日本語訳文は、原子力安全問題研究の第 一人者である京都大学原子炉実験所勤務の今中哲二さんに点検をお願いしました。また、 英語訳文はスラブ研究センターの同僚であり英語の母語話者であるデイヴィッド・ウルフ博士 に、通読し点検していただきました。多忙を押して、細部にわたる貴重な助言をして下さっ たお二人にお礼を申し上げます。 本論文をロシア語から日本語へ、また英語へと翻訳する作業は、家田堯が行ないました。 彼は本年 3 月のウクライナ訪問に自費で参加し、筆者のおぼつかないロシア語を支えて通 訳を務め、今回もボランティアで翻訳にあたりました。 本論文の訳責は全て監訳者にあります。訳文や内容について、お気づきの点をご指摘 いただければ幸いです。 本論文が日本における放射能リテラシーの向上に役立つことを願いつつ。
2013 年 11 月 北海道大学スラブ研究センター 家田 修
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目次
1.序文 17 2.チェルノブイリの時代:キエフ住人の観点 17
3.人体へ影響を及ぼす源泉としての電離放射線 18 ・測定に用いる単位について
・自然放射線について
・電離放射線と DNA
・放射線被曝の影響 4.電離放射線が及ぼす健康被害を予防するための方針 26
結論 訳者補遺
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序 遠い日本に住む、親愛なる読者の皆様へ!
2011 年に発生した大惨事の被害を受けられた方々に、 心からのお見舞いを申し上げます。私は、私自身が本や 映像を通して学んだ日本の方々特有の不屈の精神、勤勉 さ、そして組織力が、今の状況を乗り越える原動力とな ることを心から願っています。また、皆様のそのお力が、 今後何百年にも及ぶ時代を生き抜く礎となることを信じ ています。
心からの敬意を表して
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筆者
1.序文
初めに短く自己紹介をさせて下さい。私は第二次世界大戦中にウクライナ南部のザポリー ジャ州で生まれました。当時母は医学研究所の学生で、父は農学者として働いていましたので、 私は母の両親に育てられました。祖父母は二人ともロシア語の教師でした。私は高校卒業後に 2 年間はたらき、それから医学研究所で高等教育を受けました。臨床医学を専攻して 1969 年 に卒業しました。現在はウクライナ医学アカデミー・衛生・ 医学生態学研究所に在籍しており、 この研究所に勤めて今年で 35 年目になります。1981 年に放射線生物学修士号を、1992 年に は遺伝学と衛生学の博士号を取得しました。多様な分野の知識を結合することによって、人は 広い視野と包括的な学問的・実践的能力を習得できると私は考えています。
1992 年以降、同研究所内にある遺伝・疫学実験室室長を務めています。私たちの実験室では、 ウクライナ国民の遺伝子の研究をしています。具体的には、遺伝子による健康への影響、新生 児に見られる先天的な病気の発症率、また遺伝子異常によって起きる生殖機能障害の予防が研 究テーマです。私たち研究チームの研究結果は 19 の著作(モノグラフ)として紹介されており、 そのうちの 14 は『遺伝子プールと健康』シリーズとして知られています〔註:遺伝子プールとは、 交配可能な遺伝子を持つ種全体の遺伝子を指します。訳者〕。1992 年以降、私たちの遺伝・疫 学実験室では 16 人が修士号を、7 人が博士号を取得しています。
2.チェルノブイリの時代:キエフ住人の観点
1986 年まで、ソ連であのように大規模な原子力発電所の事故が起こり得るとは、誰も想像
すらしていませんでした。テーチャ川流域で起きた放射能汚染(1948 年)やウラルの核惨事 (1957 年)に関する情報は当局によって隠蔽されました。したがって、その後も原子力は安全
だと信じられていたのです。
1986 年 4 月 26 日の午後、私が勤務していた研究所の所長から同僚達に、チェルノブイリ原 子力発電所で事故が発生した、との通知が届きました。しかしその通知は、「原子炉は破壊さ れたが、状況は制御可能である。また、キエフの住民にとっては幸いなことに、放射能雲は西 方へ向かった」というものでした。その時私は、「原子炉は破壊されたが、状況は制御可能で ある」という言葉に注目し、違和感を覚えました。そして数時間後には、この情報は真実では ない、そんなことはあり得ない、何か行動を起こさなくてはならない、と思ったのです。 当時、私の娘夫婦はクリミア半島(ウクライナ南部)を旅行中でした。しかし私の弟には、4 歳と 7 歳の子供がいました。私は直ちに弟に連絡を取りました。そして私の甥とその親友の合 わせて 4 人を、翌日までにザポリージャ州に住む私の両親のもとへ避難させました。この子達 は放射性ヨウ素に被曝せずに済みました。私は職場でヨウ化カリウムを見つけたので、すぐさ ま研究所の同僚達や親戚に分け与えました。しかし、ウクライナの諺にあるように、人は隣人 の言葉には耳を貸さないものです。私の親戚の数人は、ヨウ化カリウムの摂取を拒否しました。 彼等は、私が根拠もなく不安をあおっていると考えたのです。彼等は多くのウクライナ人と同
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様に、ラジオやテレビの報道を頼り、ドニエプル河畔で休日を過ごす子供達の映像を観て、危 険なことなど何も起きていないと信じていました。またしても、必要な情報が人々に提供され なかったのです。あるいは私の親戚と同様に、当局も完全には状況の深刻さを把握していなかっ たのかも知れません。 その後、キエフに住む子供達の避難が始まりました。すると今度は、今まで状況を楽観視し ていた人々が態度を一変させて、子供を連れて街中を歩く母親を非難の目で見るようになった のです。人々は、母親が親としての使命を果たさず、子供を危険から保護していないと言って 責めました。 除染のために、道路は頻繁に洗浄されました。私も除染のために自分のマンションを掃除し ました。当時、首都キエフへは、ウクライナ南部から汚染されていない野菜が供給されている と言われていました。
事故が起きてから長い時間が経過しました。しかし私の中では、チェルノブイリ以外の数々 の事故に関しても、当局が提供する情報への疑惑が消えたことはありません。またその後、ウ クライナで起きた体制転換や経済の崩壊といった出来事に際しても、私の疑惑は強まるばかり でした。人々に危険が生じた時、当局は権力者の方針を優先させ、民衆の意思を考慮せずに判 断を下すものです。
以上の経験は私に次の事を教えてくれました。すなわち、人は自分が必要とする情報を、多 数の異なる情報源から入手するべきです。権力の支配を受けない、独立した立場の専門家に相 談しなければなりません。こうした手順を踏み、自ら判断を下すべきです。
3.人体へ影響を及ぼす源泉としての放射線
国際連合総会決議(1979 年)は、全人類の活動における合目的性と有効性に共通する唯一 の基準は人々の「健康」であると宣言しています。また、1992 年にリオデジャネイロで開催 された地球サミットでは、国連加盟各国の代表ほぼ全員の賛同を得て、アジェンダ 21 が採択 されました。同アジェンダは、現代人およびその子孫は、誰もが経済的・健康的に満足のゆく 生活環境の中で、自然との調和を保ちながら創造的な人生を歩む権利があると明言しています。
自然環境は、人体の形成と健康に影響を及ぼす重要な要因の一つです。「人体の健康」には、 もちろん生殖組織の健康も含まれます。自然環境の中で、電磁波(電磁場)は特異な地位を占 めています。世界保健機関(WHO)の報告によると、人間の生活環境における電磁波のレベルは、 自然界の平均レベルよりも高いとされています(1984 年)。そして放射能汚染事故が起きた現 在、生物、および生物を構成する細胞も電磁波放出源であると見なせば、私たちが置かれてい る電磁波環境全体が、人体や他の生物の有機的な機能を阻害する「障害物」であると考えられ るのです。
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原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR )の定義によると、原子や分子の 中に存在する電子をはじき出したり励起する電磁波や粒子を電離放射線と呼びます。〔本稿で は、多くの場合 “ 電離 ” をはぶいて、単に放射線としました。訳者〕
電離放射線は 2 種類に分けられます。一つは電磁波で、エックス線とガンマ線がこれに属し ます。もう一つは粒子状のもので、それにはベータ粒子(電子、陽電子)、陽子(水素原子核)、 重陽子(重水素原子核)、アルファ粒子、重イオンなどが含まれます。中性子は電荷がゼロですが、 間接的に電離を引き起こすので、電離粒子の一つと考えられています。
放射線量の精確な測定技術は 1928~1929 年に確立しました。線量の測定に規準が設けられ、 照射線量の国際的な単位として「レントゲン(R)」が用いられるようになったのです。 以後、放射線の影響に関する多くの研究データが蓄積されました。放射線の種類が異なると、 同じ線量に被曝した生物の間で、量的に、時には質的にも、異なる影響が確認されました。さ らにその影響の差が、空間内や生物内における、エネルギーの分布の差によるものであること も解明されました。
測定に用いる単位について
異なる種類の放射線が及ぼす生物学的な影響量を比較するために、生物学的効果比(RBE) という概念が設けられました。これは、同じ吸収線量でも放射線の種類やエネルギーにより異 なるレベルの影響が現われるという相対的な考え方です。 国際放射線防護委員会(ICRP)の定義では、放射線量を測定する際に用いる基本的な単位 は吸収線量とされています。吸収した放射線のエネルギー量はジュール(J)で表わされ、単 位質量にはキログラムを用います。そして、物質 1 キログラムが放射線から 1 ジュールのエ ネルギーを受け取った場合の吸収線量が 1 グレイ(Gy)と定義されました。 等価線量と実効線量という概念もあります。放射線は、種類によって生物に与える影響が 異なります。個々の放射線の種類に応じて算出した係数を放射線荷重係数(Wr)と呼びます。 等価線量を計算する場合には、生物の組織や器官の吸収線量に放射線荷重係数を掛けます。 等価線量はジュール/キログラムで表され、シーベルト(S v)という単位で表されます。 等価線量と放射線が実際に与える影響の関係は、被曝する組織や器官によって異なるとされて います。この違いを考慮して算出されるのが組織荷重係数(Wt)です。そして、等価線量に 組織荷重係数を乗じたものが実効線量です。実効線量もジュール/キログラムとシーベルトで 表されます。等価線量が個々の組織と器官によって吸収された放射線量を計算するのに対して、 実効線量は個体全体で吸収した線量を計算するものです。 放射性物質からの放射線被曝量を測定するにあたっては、「放射能」(A)という概念の理解 が必要になり、放射能の強さの単位にはベクレル(Bq)を使用します。ベクレルは、1 秒間 に崩壊する原子核の数を示します。
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現代社会では、世界中で多くの人々が放射線に接触しており、今後その人口は増加を続けるで しょう。
自然放射線について
自然環境放射線について少し触れておきましょう。自然の放射性核種は地球誕生の時から地 殻に含まれていました。ですから、地球が誕生して以降、自然界の放射性核種から生じる放射 線と宇宙線によって構成される環境放射線(バックグラウンド放射線)は、常に存在してきた のです。 したがって、生物の起源と人間を含む生物種の進化は、電磁波の大海原の中で起きたと考え られます。 地球上に存在する全ての生物は、自然界の電離放射線と非電離放射線の影響を受けています。 自然環境放射線の線量は地理的な条件によって異なりますが、地球上で人間が受ける被曝線量 の平均は 2.4 ミリシーベルト(年間)とされています。〔地球上には、地理的な条件によって 一般人の年間被曝線量が 2.4 ミリシーベルトの 2 ~ 3 倍に至る地域も多々あります。訳者〕こ の値の 4 分の 3 までは、ラドンによる被曝です。屋内(建物の地下、1 階、2 階など)におい ては、土壌や建材等に含まれるラドンやガスの燃焼等によって放出されるラドンが、被曝の主 な源となります。
自然放射線は地表水や地下水に含まれている場合もあります。
自然放射線による被曝の 15%までは、放射性カリウムが占めています。カリウムは多くの植 物性・動物性食品に含まれています。動物性の食品には、極少量ですが、ラジウム(226Ra)、 ポロニウム(210Po)、鉛(210Pb)も含まれています。人体中の放射能(これを「人体の放射能」 と呼びます)は、カリウム、炭素、水素などといった、生物圏に存在する放射性核種の取り込 みによって組成されています。
宇宙空間と太陽表面も放射線の源です。
人類の経済活動は、自然界に存在する放射線源に加えて、更に人工的な線源を創りだしまし た。石炭、石油、リン酸塩などの天然原料を処理する際には、作業員によって放射線の「職業 的な」被曝が生じます。また、石炭の使用にあたっては、石炭を掘り起こす作業員だけでなく、 石炭を利用する全ての人が放射線に被曝します。 放射線は、医学の分野でも治療や診察に用いられます。 核実験や原子力発電所における事故の影響も考慮しなければなりません。
放射線と DNA
放射線による生物影響の体系的な研究は、X 線の発見によって始まりました。1930 年代後 半までには、X 線の影響による変異原性〔DNA や染色体が傷ついて、突然変異が起きる現象。
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訳者〕が確認され、その研究結果が発表されました。現在では、吸収線量の生物医学的効果は、
1.線量値 2.放射線の種類 3.放射線量の時間分布と体内分布 4.被曝(照射)時間
によって左右されるとみなされています。
当初は、観察された放射線の効果を説明するために、標的説が用いられました。標的説は、 放射線は細胞に直接的な影響を及ぼす、という仮定に基づいていました。一定量の放射線が、 傷つきやすい(放射線感受性の高い)細胞に偶然衝突し、遺伝子の変異を引き起こすイオン化 作用を及ぼすと考えられていたのです。DNA の役割が明らかになるまでは、遺伝子は高分子 であると考えられていました。 その後、放射線が細胞へ衝突しても、ただちに染色体の切断を促すものではないことが分か りました。被曝の初期には、染色体の局部において潜在的な損傷が生じ、一定期間を経た後に、 その一部に遺伝子の変異や染色体の損傷が起きることが解明されたのです。
一方、20 世紀後半には、放射線のもたらす間接的な影響が明らかになっていきました。ヒ ドロキシラジカル(酸化力が強い活性酸素)と水和電子という、水の放射線分解生成物によっ て DNA が損傷を受けることが判明しました。これに加え、フリーラジカル(遊離基)型の酸 化連鎖反応が起こり、その生成物が染色体と細胞膜に損傷を与えることも分かりました。〔フ リーラジカルは不安定な原子や分子で、他の分子から電子を奪うことによって安定しようとし ます。訳者〕 また、人体は、人体が受ける全ての悪影響に対して、不特定な適応反応(これを非特異的適 応反応といいます)を起こします。人体はこのようにして環境の変化に適応しようとします。 すなわち、細胞の損傷は、放射線や他の物質によるダメージ(損傷)だけでなく、そのダメー ジ(損傷)を修復する過程によっても起こるのです。適応反応には様々な性質のものがありま すが、低線量の放射線による影響下では、放射線による DNA への一次的なダメージを排除す る適応反応の方が、受けたダメージの増幅を抑制する適応反応よりも優位になると考えられて います。
親から子へ同じ遺伝子(遺伝的連続性)が受け継がれるために、生物はその進化の過程で突 然変異を抑制する(抗変異原性)システムを築きあげてきました。このシステムは二種類に分 かれています。
1.細胞の酵素系。 例:カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼなど。
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先ほどフリーラジカルについて記述しましたが、フリーラジカルは被曝などの影響によって生 じます。酵素系はフリーラジカルが与えるダメージから遺伝子の構造を保護します。
2.DNA 修復系。ダメージを修復するシステム。
DNA の修復には、約 200 種類の遺伝子が関与していると考えられています。そして最終的には、 個体レベルで、インターフェロンやセルロプラスミンなどによって遺伝子の構造が保護されま す。
以上のことから分かるように、体内の抗変異原性システムは、ダメージを排除するための十 分な基盤を持っています。しかし、このシステムも、全てのダメージを修復できるわけではあ りません。非回復性損傷と呼ばれる修復不可能なダメージが存在するのです。また、遺伝子は 誤って修復されることもあります。しかし、これに対して生物の免疫システムは、修復されな かった細胞の大半を体外へ排出する機能も持っています。
ここで、次のことを頭に入れておく必要があります。抗変異原性システムは、長期に及ぶ人 工的な圧力には対抗できず、次第に機能しなくなります。人工的な圧力には、もちろん人工放 射線も含まれます。抗変異原性システムが機能しなくなると、変異が加速します。 人体の抗変異原性システムの中で、甲状腺は重要な役割を担っています。甲状腺ホルモンが 細胞や組織にエネルギーを供給する事はよく知られています。甲状腺ホルモンは、DNA の修 復や生殖活動において重要な役目を担っています。また、発がんを抑制する抗発がん作用にとっ ても、必要不可欠な要素なのです。甲状腺ホルモンは、放射線が染色体に損傷を与えようとす る時に効力を発揮し、傷ついた染色体を内包する細胞の数を減少させる働きを見せます。外部 からの影響(外部因子)から低強度ないしは中強度の影響を受けると、甲状腺ホルモンの機能 は通常の 1.5 ~ 2.0 倍に増加します。このようにして人体は外部からの影響に非特異的適応反 応を示し、甲状腺はその中核を担う器官なのです。
一方、過去数十年来の研究によって次のようなことも明らかになりつつあります。それは、 生物は一度放射線による低線量に被曝すると、再度被曝した際には、遺伝子の損傷が抑制され、 哺乳類に関しては、生存能力を持った細胞の数が増加するという事実です。 適応反応、細胞の増殖、新陳代謝への刺激などは、外部因子からの影響に対する非特異的適 応反応の表れだと考えられています。人体の免疫システムは、全身被曝の場合には 0.2 ~ 0.3 グレイまで、局部被曝の場合には 1 ~ 2 グレイまで適応反応を示します。
現在では、放射線による人体への医学的影響は、2 つのカテゴリーに分けるべきだと考えら れています。
1.被曝線量にしきい値を設け、確率論に基づかない考え方(確定的影響)。これをしきい値 モデルと呼びます。しきい値モデルが適応される疾患には、放射線熱傷、放射線障害、放射線
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白内障、胎内で被曝した子供が持って生まれる先天性障害(奇形など)などが含まれます。被 曝線量と人体が受ける影響の重篤さは、直接的な対応関係にあると考えます。 2.確率論的な考え方(確率的影響)。 被曝線量のしきい値を設けずに、どんなに低い線量も、腫瘍の発生や遺伝子の疾患などを引き 起こす可能性があると考えます。確率的影響論によれば、被曝線量が対応関係にあるのは、人 体が受ける影響の「重篤さ」ではなく、影響を被る「頻度」であるとみなします
生物には、抗変異原性や非特異的適応反応など、自らの生命活動を支え、環境から受ける悪 影響へ適応するための、基本的なメカニズムが備わっています。よって、個々の生物には各々 のしきい値が存在すると考えることができます。また、そのしきい値の差に応じて、被曝から 受ける影響に差が生じると考えるべきです。しきい値の高さは、個々の生物が持つ遺伝子の、 悪影響に対する感受性や、悪影響を受ける時点での体内の機能状態などによって異なります。 後者の例として、DNA の修復を行う酵素の状態や、非特異性の防護因子、免疫システムなど が挙げられますし、その他にも、現在は未だ明らかになっていない要因が多々あるでしょう。 人々を集団としてとらえた場合、集団の中には、遺伝性の要因、ないしは後天的な要因によっ て、外的なダメージに対する抵抗力が低く、放射線に対する高い感受性を持っている人が必ず います。ですから、異なる感受性を持つ人々を「集団」レベルで考える場合には、放射線の確 率的影響にはしきい値を設けないのが妥当だと考えられます。
しかし、被曝線量のしきい値は、低線量率での恒常的な低線量被曝について考える際には重 要な意味を持ちます。人体の健康に関して、以前は 0.2 シーベルト以下の被曝は、人間の活動 に重大な影響を及ぼさないと考えられていました。しかし過去 10 年間で、低線量被曝のしき い値は 0.1 シーベルト、ないしはそれ未満に引き下げて考えられるようになりつつあります。 今日では、年間 0.1 シーベルト以下の等価線量を「低線量」と捉えています。また、生涯で 吸収する等価線量は 1 シーベルトを超えてはならないとされています。 高線量の放射線被曝は、核兵器を用いた戦争時や、原子力発電所および原子力再処理工場な どで起きた事故の初期にのみ見受けられます。他の状況下では、一般市民や専門の作業員が被 曝するのは、低線量被曝であるということを頭に入れておく必要があります。
生物が受ける低線量被曝を考えるとき、現在では直線しきい値なしモデルという概念が用い られます。直線しきい値なしモデルでは、高線量被曝が及ぼす影響のデータを基にして、低線 量被曝の影響(外挿データ)を推定し、いかなる線量でも、吸収線量の増加はガンと先天性疾 患の発症率を高めると考えます。一方、直線しきい値なしモデルの問題は、細胞と組織、器官
(臓器)、そして最終的には個体(人体)レベルで生じる適応反応と補正のプロセスが考慮され ない点です。なぜ問題かというと、正常な状態への回復を担うのは修復機能であり、ダメージ の促進は、ダメージの規模と修復力の比率によって決定づけられるからです。 直線しきい値なしモデルには以上のような問題がありますが、このモデルの使用は放射線の
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晩発性効果(被曝後に一定期間を経てから表れる症状)による発症率の増加を認めるので「、人 道的」だとされています。
低線量被曝が細胞に与える影響の分子生物学的な研究は、生物の修復システムが正常に機能 することによって、恒常的な被曝によるダメージは軽減できるということを、私たちに教えて くれます。低線量の放射線が与える影響の基礎となるのは、細胞膜と細胞核内にあるフリーラ ジカルによって引き起こされる適応反応です。しかし放射線による長期的な影響は、最終的に は神経、内分泌、免疫、ならびに造血の各システムを緊張させ、衰弱へと導きかねません。ま た、研究の結果、これら放射線によって引き起こされる症状に対して人体が示す反応は、慢性 的なストレスによって引き起こされる様々な問題に対して、人体が示す反応と同様であること が解明されています。 視床下部-下垂体-副腎系の衰弱は適応疾患を引き起こす恐れがあります。そして、適応疾 患はチェルノブイリ事故の被災者に見られる内分泌疾患のかなりの割合を占めています。
放射線生物学的な影響の非特異性と、その影響が及ぶ生物の多様性(範囲の広さ)を総合的 に考えると、数々の非特異性の影響が持つ共通の特徴が見えてきます。非特異性の影響は、生 命の活動を支える生物の基本的な機能(メカニズム)と、変化する生活環境にたいして生物が 示す適応能力の多様な可能性の表れなのです。生物が示す反応については “ アルント=シュル ツの法則 ” を応用できます。つまり、弱い刺激は生物が持つ潜在的な能力を励起し、生物が受 けた影響に対する適応能力を呼び起こします。中程度の刺激は適応反応を引き起こす代わりに、 適応反応を抑圧します。そして強い刺激は個体を破壊します。
放射線被曝の影響
低線量に被曝した人々が最も心配することは何でしょう?ガンの発症、障害児の誕生、不妊 …現在では、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)による一連のレポー トが、放射線被曝者に見られる悪性腫瘍の発生率に関する、疫学的に正しい研究結果をまとめ ています。(UNSCEAR が発がんリスクの評価の基礎とし、被曝管理のための基準値設定に用 いているのは、広島・長崎の被爆者の発病率および死亡率の研究で、広島・長崎の被爆者のデー タは高線量被曝の影響しか扱っていないという問題があります。また、被曝線量とリスクの評 価には直線しきい値なしモデルが用いられるという点も考慮しなければなりません。これらの 問題を理解していれば、UNSCEAR の研究結果は有益な情報を提供してくれます。) 統計学的に明瞭な腫瘍発生率の増加が、いくつかの例外と共に発表されています。白血病と 放射線被曝の関係も明らかにされています。また、広島・長崎の高線量被曝の影響のデータを 基にして、低線量率被曝の場合の発ガンリスクが算出されています。その際に、低線量率にと もなう発がんリスクは 3 分の 1 以下に引き下げられました。(最近の推定では 2 分の 1 ですが。) UNSCEAR は独自のデータを基に、ガンマ線および X 線によって 1 シーベルトの高線量を被
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曝した場合の、異なる年齢層の男女における腫瘍による死亡率を、男性:9%、女性:13%と 発表しています。(ガンマ線や X 線は、低い RBE 値の放射線、すなわち生物に与える影響が 小さい放射線だと考えられています。)死亡率の推定値には「不確かさ」があり、最高値をと れば 2 倍に、最低値なら 2 分の 1 に評価され、恒常的な被曝のリスクも 2 分の 1 に減少する 可能性があります。すなわち、恒常的な低線量率の放射線の影響下では、発がんのリスクは低 くなるというのです。
一方、ガンの発症率は、ガンによる死亡率の 2 倍であると考えられ、また、幼児期における 被曝による死亡率は、異年齢層の死亡率に比べて 2 倍であるとされています。
UNSCEAR は、1 シーベルトの高線量を被曝した男女に一生涯で発生し得る白血病の発症 率(男女共通)は 1%であると発表しており、この値の不確かさの範囲もまた、2 倍ないしは 2 分の 1 であるとしています。
被曝が人体の生殖機能に与える確率的な影響に関しては、外的ないし内的な因子によって遺 伝子に重大なダメージを受けた胎芽(人間の受精後 8 週間未満の生体)は、自然淘汰の作用と して、自然流産や不妊によって排除されることが確認されています。自然淘汰で排除されなかっ た場合、被曝の影響は、いくつかのタイプの先天的障害や軽度の変異として表れる可能性があ ります。 チェルノブイリ事故の処理に携わった作業員達における腫瘍性疾患のリスクは高く、またリ スクの高低と吸収線量との因果関係は周知の事実です。さらに私達は放射性ヨウ素に被曝した 子供たちと甲状腺がんの明白な関係をも知っています。一方、放射能汚染地域に住む住民の疫 学的な調査は、被曝によって生じる生殖機能の異常を示す、明白な証拠を提供するには至りま せんでした。なぜなら、これらの調査にはいくつかの欠点があり、科学的根拠に基づく医療
(Evidence Based Medicine(EBM))の法則に反する面があったからです。また、慢性的なス トレスの影響と恒常的な低線量被曝の影響は、ほとんど区別できないという問題もありました。
今日、国際社会は、集団(民族)の性質の差異に関係する、放射線リスク評価の多様性を認 めています。性質の異なる集団においては、放射線の影響も異なる形で現れるだろうと考えら れています。したがって、生活習慣や食生活を考慮した上で、日本人と、汚染がひどかったウ クライナのポレーシア地方の住民とを比べると、同等線量の放射線の影響下では、日本人に現 れる健康被害の方が少ないだろうと考えられます。
UNSCEAR の専門家は放射線汚染地域の住民を対象にして、放射線の影響と異常妊娠の関 係を研究しました。彼等の疫学的な研究結果によれば、放射線の影響が死産、早産、先天性異 常の発症率を増加させるという、個別的な調査結果によって明らかにされた事実は認められま せんでした。チェルノブイリ事故によって人々に蓄積された被曝線量を考えると、UNSCEAR の結論は論理的と言えるかも知れません。 ウクライナ住民がこれまでに受けた被曝線量(当局が公表する被曝線量が実際の線量よりも
25
低かったとしても)は次の事を明らかにしています。汚染地域の住民に対する健康被害に関し て、放射線の影響はそれほど重大なものではないし、ましてや致命的ではないはずです。その 一方で、民衆による健康被害の認識、特に生殖機能の被害に関する認識は、不適切な程に強い のです。医者の間でさえ、低線量被曝による極度の危険性に関して、科学的根拠に基づかない 認識が流布しています。このような認識は、政府にとって、そして一定の人々と医療従事者に とって、有益なのかも知れません。彼等は、生活環境に蔓延し人々の健康を害している放射線 以外の因子に対して責任があります。しかし責任者は、低線量被曝が与えるリスクを過剰に評 価することによって、自らの責任を軽減しているのです。全ての病理は放射線に起因する、と 考えることは非常に都合が良いのでしょう。何故なら、このような認識は、「どうせいつかは 放射線の影響で発病するのだから、生活習慣を変える必要もないし、悪習を続けてもいい」と いうような姿勢の原因となり得るからです。
まとめ
1.電離放射線は、環境に存在し、実質的な健康被害を与え得る諸要因の一つである。 ある程度以上に産業文明が発達した国では、人々は、自然界に起因する影響よりも、放射線に よる影響に対して、強い反応を示します。低線量被曝は、体内で非特異性適応反応を引き起こ します。放射線生物学的な影響の非特異性と、その影響が及ぶ生物の多様性(範囲の広さ)を 総合的に考えると、そこには数々の非特異性の影響が持つ共通の特徴が見えてきます。非特異 性の影響は、生命の活動を支える生物の基本的な機能(メカニズム)と、変化する生活環境に たいして生物が示す適応能力の多様な可能性の表れなのです。
2.チェルノブイリ事故の影響を受けた汚染地域における健康被害を認める論者達は(私たち の研究もこれに関連しています)、汚染地域の住民が受ける影響として、恒常的な放射線被曝、 慢性的なストレス、不適切な食生活、および貧困を同定しています。当地域の住民の大半は、 貧しい生活を送っています。 しかし、一般人にとっては、「どのような原因によって発病したか」よりも「健康でいること」 の方が大切です。そして、健康でいるためには、どの様な姿勢で生活を営むべきかを知らなけ ればなりません。
4.放射線が及ぼす健康被害を予防するための対策
第3章で取り上げた事項を考慮すると、恒常的な低線量被曝の影響に対する予防策は、いくつ かのカテゴリーに分類する必要があります。
A
低線量被曝に対して、人体は非特異性適応反応を示します。それならば、バランスの取れた 26
食事と適応力促進剤の摂取によって、放射線への抵抗性を高めれば良いのです。適応力促進剤 は、できれば天然由来のものが好ましいでしょう。 現在では、健康体を生理学的に維持し、健康体の生理学的な需要に見合った栄養とエネルギー を供給する食事が、バランスの取れた食事であるとされています。健康的な食事とは、摂取す る食物と身体にかかる負荷の最適な比率によって成立する、健康的なライフスタイルの一部で す。
1 日分の食料は、次の各食品によって構成されるべきです。
炭水化物(野菜、果物、全粒粉のパンや玄米といった全粒穀物など):45 ~ 65%、 たんぱく質(魚、鶏肉など脂肪分の少ない肉、卵、豆類、ナッツ類):10 ~ 35%、 脂肪分(これは、魚やオリーブオイル、ナッツ類等に含まれる不飽和脂肪酸でなければいけ ません):20 ~ 35%。(穀物たんぱく質に含まれるグルテンを受け付けない体質の人々がいる ことを忘れてはなりません。彼等はこのようなグルテンの摂取によってセリアック病を患いま す。) 全乳よりも、低脂肪の発酵乳製品を摂るべきです。乳製品は、たんぱく質、カルシウム、ビ タミン D、カリウムの豊かな摂取源です。 水素加工した植物性油(硬化油)を使用した菓子類、マーガリン、ファストスプレッド、イ ンスタント食品や、成型肉の摂取を控えるべきです。甘い炭酸飲料も多量に摂取するべきでは ありません。
栄養状態を最も単純に計算できる方法として、ボディマス指数が挙げられます。ボディマス 指数は体重と身長の関係から算出され、その計算方法は、
BMI =体重(kg) ÷ 身長m²
です。例えば、体重 60 kgで身長 1.65 mの人の場合は、 BMI = 60 ÷(1.65 × 1.65)≒ 22.04
となります。成人における BMI 指数は、18.5 ~ 24.9 が普通体重とされ、 18.5 未満は低体重、
25.0 ~ 29.9 は高体重、
30.0 ~ 34.9 は肥満 1 度、
35.0 ~ 39.9 は肥満 2 度、
40 以上は病的肥満とされています。
〔日本では、18.5 ~ 24.9 が普通体重とされ、18.5 未満は低体重、25.0 ~ 29.9 は肥満 1 度、
30.0 ~ 34.9 は肥満 2 度、35.0 ~ 39.9 は肥満 3 度、40 以上は肥満 4 度とされています。指数 27
の解釈は国によって異なります。訳者〕
現在私たちが得ている知識によれば、放射能汚染地域における栄養管理では、次の事項を考 慮しなければいけません。
・食品を通じた放射性核種の摂取量を軽減すること ・放射性核種が消化管へ吸着することを抑制し、また体外への排出を加速させること ・エネルギーと生命力の維持に不可欠な食品を、バランス良く摂取すること、日々の食生活を
考えるべき
食品による放射性核種の摂取を予防するためには、
・果物と野菜を徹底的に洗ってください
・果物と野菜に含まれる放射性核種の 40%までは、表層部に集中的に付着しているので、よ
く洗う必要があります。 ・調理において、一定のルールを厳守する必要があります。放射線に汚染された状況下では「、煮
る・ゆでる」調理法を優先的に用いるべきです。放射性核種の大半はゆで汁の中に溶け出しま す。ですから、食品を 10 分間ゆでてから、ゆで汁を捨て、その後に再度加熱すると効果的です。 きのこ類は、この 10 分間のゆでこぼしを二度行うと効果的です。 放射線によって汚染された肉・魚類は、調理する前に 1.5 ~ 2.0 時間、水に浸す(浸水させる) ことが勧められます。
放射性核種が消化管へ吸着することを抑制し、また体外へ排除することを加速させるには、 特別な食事方法や、エンテロソルベントと呼ばれる、腸を洗浄する人工的な吸着剤によって可 能です。
・食生活にたんぱく質が不足すると、放射性セシウムの蓄積が進み、逆にたんぱく質を多く摂 るとセシウムの排出が加速します。
・穀類、ジャガイモ、アプリコット等に含まれるカリウムの摂取(一日に 5 グラム以上)は、 放射性セシウムの腸への吸着を減少させます。
・カルシウムの十分な摂取は(一日に 800 mgまで)は放射性ストロンチウムの吸収を減少さ せます。更年期に入りつつある女性には、骨粗しょう症予防のために一日あたり約 1200 mg のカルシウムの摂取が勧められています。
・食物繊維、野菜や果物のペクチン、昆布から抽出されたアルギン酸塩を摂取することは、腸 の蠕動(ぜんどう)運動を高めるだけでなく、放射性核種と金属イオンの結合を促して複合体 を形成します。その複合体は体内では吸収されず、体外へ排出されます。食物繊維の摂取量は、 一日あたり女性は 20 ~ 25 g、男性は 40 gまでが目安です。一般的には、食物の熱量 1000
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キロカロリーに対して、食物繊維の摂取量は 14 gまでとされています。 日々の食生活では一日あたり 2 ~ 4 gのペクチンを含んでいなければなりません。 人工的なエンテロソルベントは、短期間だけ服用するべきです。
放射線に被曝した人には以下の事が勧められています。
・たんぱく質を豊富に摂取すること。特に、スルフヒドリル基(SH 基)を含むシステインや メチオニンなどのアミノ酸が大切です。これらのアミノ酸は特に乳製品に多く含まれており、 被曝時に発生するフリーラジカルに反作用を及ぼします。
・放射線の影響に対抗するためには、(体内組織の硬化を抑制する)反硬化作用のある不飽 和植物性油を多く摂取すると効果的です。動物性脂肪は、食生活における油の摂取量全体の 10%を超えてはいけません。
・ペクチンや食物繊維といった、非でんぷん性多糖類を毎日の食生活に取り入れる。摂取量は 上記の通りです。
・ビタミンA,B,C,E,Pの摂取量を増加させる。毎日の摂取量を 30 ~ 40%にまで高めましょ う。
・体内を十分な量のヨウ素で満たす。一日あたり 150 ~ 200 μgが勧められています。ヨウ素 が欠如すると甲状腺の活動がダメージを受けます。特に妊娠中の女性はヨウ素を多めに摂取す る必要があります。
・次の物質の摂取をコントロールする必要があります。 銅(2 ~ 3 mg/日)
亜鉛(15 mg/日まで)
マンガン(5 mg)
コバルト(100 μg/日まで) セレン(100 μg/日まで)
B
恒常的な低線量被曝による健康被害を、人々が正しく評価していないという事実を考慮しな ければなりません。正しく評価できない原因として、以下の各要素が挙げられます。
・十分でない保健教育 ・過去の経験に基づいた、将来起こり得る原子力事故への恐怖 ・メディアが提供する、誇張された情報 等
病気の原因を人々がどのように捉えているかについて、私たちが行った研究のデータは、次 の事を明らかにしています。(病気の原因の順位付け(ランキング)を実施)
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・汚染地域に居住し、先天性障害を持つ子供を出産した母親達は、子供の先天性障害の最も重 大な要因(第 1 位)を、放射能による影響だと考えていました。
・一方、同じ汚染地域に居住し、健康児を出産した母親達は、子供の先天性障害の原因として、 放射能による影響を第 3 位に順位づけました。
・しかし、彼女達自身の人生を脅かす要因としては、全ての母親が放射能による影響を第 1 位 に順位付けました。
放射性物質の完全な除染は不可能であるという事実や、現実に起きる健康被害などに直面し て、自分の置かれた状況を絶望視すると、被曝者の中には慢性的なストレスが発生します。そ して慢性的なストレスは、既存の疾病を悪化させ、さらに新たな病気を引き起こす可能性があ るのです。
今日私たちが得ている研究データによると、慢性的なストレスが、発がんと奇形発生に代表 されるような、突然変異を誘発する重大な要因だとされています。これらの病理は、腫瘍疾患 や先天性障害児の誕生を促進させる可能性を秘めています。
慢性的なストレスを持つ患者には、ストレスによる悪影響を予防する対策を講じなければな りません。予防策にはいくつかの異なる方向性があります。
1.食生活の改善。恒常的な被曝と同様に、ストレスの発生は体内でフリーラジカル性の酸化 を促進・強化させます。酸化による影響は、抗酸化物質を含む食品や天然サプリメントの摂取 によって平均化(中和)できます。このような栄養素の摂取は、恒常的な被曝に対しても効果 的です。
今日、グローバル化の発展に伴う情報の流布によって、人々の精神衛生にまつわる問題が増 加している事実も見逃してはなりません。私たちは、この問題に対する解決策をも講じる必要 があります。よって、ストレスによる悪影響を予防するための二つ目の方策は、
2.精神衛生の強化。精神衛生の強化には、様々な分野の研究を統合して(学際的に)取り組 まなければなりません。そして何よりも大切なのは、精神衛生を維持し、健全な生活を送るた めの、明確な人生設計と生活環境を整えることです。
3.ストレスの要因に対する、的確で積極的な反作用。瞑想(メディテーション)の要素を含 む心理セラピーは、人間の個人的な諸問題や社会の変化による影響を制御するための、具体的 な方法論を有しています。このようなセラピーは、精神衛生の破壊を抑止する力を持っていま す。患者が自己認識のシステムと治癒のための環境を自らの力で確立できるか否は、既存の病
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気の状態をも大きく左右します。患者は自己認識のシステムの中で、病気への適応と治癒を促 すための目標を定める必要があります。自己認識システムの確立にあたっては、心理学者、特 に医療心理学の専門家が重要な役割を担います。
C
放射線の影響下にある地域の住民を放射線から防護するためには、被曝線量を軽減しなけれ ばいけません。また、妊娠を望む女性は、内部被曝への直接的な対策以外の処置をも考慮する 必要があります。特に、リスクを軽減する間接的な対策に注目してみましょう。 私達の調査結果によると、放射能汚染地域では、実際に自然流産が起きる確立が高くなりま す(通常時の 1.2 ~ 1.4 倍)。しかし、同じ放射能汚染の影響下でも喫煙する女性の場合にそ の確率は最大 3.8 倍に増加し、慢性的な伝染病患者の場合は最大で 4.6 倍にも跳ね上がります。 ですから、子供をもうけようと考える人々は、喫煙や、高い度数のアルコール飲料を過度に摂 取などの悪習を控える必要があります。また、慢性中等度の伝染病(特に性交によって伝染さ れるもの)や非伝染性疾患を患う親達にも衛生措置を取らなければなりません。その際、妊娠 中における薬物の摂取は、医師の指導のもとに行う必要があります。 ストレスと過労を回避しなければいけません。
特に妊娠の 2 ~ 3 ヵ月前から妊娠期間中にかけては、食生活に特別の注意を払うべきです。
放射線による影響の発生と甲状腺ホルモンの関係は既述の通りです。がん患者には、トリヨー ドサイロニンと呼ばれる甲状腺ホルモンの組織内での不足が見られます。甲状腺疾患の患者は、 体内の他の部位で悪性腫瘍が発生する確率が、通常の 14 倍に増加します。母親の甲状腺疾患は、 生まれてくる子供の先天性障害を引き起こす重大な要因の一つです。現代社会では、甲状腺疾 患が広く蔓延している事実も頭に入れておくべきです。 甲状腺ホルモンの不均衡を細胞遺伝学的に分析すると、放射能の影響下で甲状腺ホルモンの 活動を正常化する治療は、同時に放射線の影響の予防にもつながることが分かります。被曝者 の診察・治療にあたっては、内分泌学的な調査が不可欠です。その際、甲状腺の調査が最重視 されるべきです。
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結論
1.予防策を講じるにあたっては、食品を通じた抗酸化物質の摂取によって、体内の放射線抵 抗性を高めることが重要です。
2.ストレスの予防は放射能事故の影響下以外でも大切なことです。そのためには、 ・食生活の改善 ・精神衛生を維持し、健全な生活を送るための、明確な人生設計と生活環境の確立 ・ストレスをもたらす要因に対する精神的に適切な対応
が必要です。
3.甲状腺は、生殖、発がん、染色体の保護において非常に重要な役割を担っています。そし て、汚染地域で人々が放射性ヨウ素の影響を受けた事を考慮すると、甲状腺機能の正常化こそ が最優先されるべきです。内分泌の専門家による診察をお勧めします。健康な方でも、少なく とも2年に1度。既住症(過去に病気を患ったことがある)をお持ちの方は少なくとも1年に1 度診察を受けるべきです。
4.人々の健康は、個人の姿勢と、個人の社会的・医学的適応および回復を支える国家の体制 によって決定づけられます。正しい教育、放射線被曝の問題に関する啓蒙、健康被害を防止す る対策は、非常に重要です。そして、全人類に課されたこれらの課題は、我々の手によって解 決できるものだと考えます。
訳者補遺
以上は『電離放射線と健康 いま誰もが知っておくべきこと』の翻訳です。以下に、オルガ・ ティムチェンコ博士が摂取するように勧めている栄養素を含む食品の一覧と、食品100g中に おける栄養素の含有量を記します。なお、チェルノブイリ事故後のウクライナと福島第一原発 事故後の日本では、放出された放射性物質の量も人々の被ばく線量も大幅に異なるので、ティ ムチェンコ博士が提案する栄養素の摂取量に関しても、その差を考慮する必要があります。持 病をお持ちの方は、予め医師や栄養管理師などに相談されることをお勧めします。
カリウム
寺納豆:1000mg、ピスタチオ:970mg、アボカド:720mg 、糸引き納豆:660mg、やまとい も:590mg、大豆(全粒、国産、ゆで):570mg、里芋(水煮):560mg、にら:510mg、
干物:まこんぶ(素干し):6100mg、ひじき:4400mg、 32
カルシウム
パルメザンチーズ:1300mg、えんどう豆(塩豆):1300mg、ゴーダチーズ:680mg、さく らえび(ゆで):690mg、プロセスチーズ:630mg、しらす干し(半乾燥):520mg、うるめ いわしの丸干し:570mg、まいわしの丸干し:440mg、オイルサーディン:350mg、がんもど き:270mg、厚揚げ:240mg、ケール:220mg、小松菜(ゆで):150mg、
干物:干しえび:7100mg、
食物繊維(不溶性、総量)
ひよこ豆(フライ、味付):19.9g, 21.0g、干し柿:12.7g, 14.0g、ゆでインゲン豆:11.8g, 13.3g、ゆであずき:11.0g, 11.8g、ひよこ豆(ゆで):11.1g, 11.6g、おから:11.1g, 11.5g、 エシャロット:2.3g, 11.4g、アーモンド:9.6g, 10.4g、寺納豆:6.0g, 7.6g、こしあん:6.5g, 6.8g、こんぶ(煮):6.8g、糸引き納豆:4.4g, 6.7g、ごぼう(ゆで):3.4g, 6.1g、アボガ ド:3.6g, 5.3g、
干物:きくらげ(乾):57,4g、ひじき(乾):43.3g、抹茶:31.9g, 38.5g、レンズ豆: 16.0g,17.1g、きなこ(全粒):15.0g, 16.9g、
ペクチンを多く含む食材
りんご、オレンジ、アプリコット、にんじん、かんきつ類の皮、その他、グアバ、プラム、オ クラやモロヘイヤにも多く含まれます。 ペクチンは大抵、果物や野菜の皮に多く含まれています。無農薬のかんきつ類を使った低糖度 のマーマレードなどは、ペクチンを摂るのに良いでしょう。1個100gのりんごの場合、皮ごと 2~3個食べると3~4gのペクチンが摂れます。アプリコットの場合は、果実300gで約3~3.5g のペクチンが摂れます。
スルフヒドリル基(SH基)を含むシステインやメチオニンなどの天然アミノ酸:システイ ン:チーズ、いわし、たまねぎ、芽キャベツ、ブロッコリー、柿、オート麦、卵、にんにく メチオニン:あさり、あじ、いか、かき、さけ、さば、しらす干し、キャベツ、グリーンピー ス、ごぼう、大豆、にんじん、チーズ、ピスタチオ、昆布、ひじき、もずく、わかめ
不飽和脂肪酸(一価不飽和脂肪酸)
オリーブオイル:74.04mg、なたね油:60.09mg、ごま油:37.59mg、あんこうのきも: 18.44mg、うなぎ(白焼き):11.95mg、さば(開き干し):10.01mg、うなぎ(かば焼き): 9.85mg、にしん(開き干し):9.21mg、しめさば:8.56mg、身欠きにしん:8.33mg、
ビタミンA,B,C,E,P
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A(レチノール当量):鶏のレバー:14000μg、豚のレバー13000μg、あんこうの肝83000μ g、うなぎの肝4400μg、ほたるいか(ゆで):1900μg、うなぎ1500μg
B1:豚ひれ肉:1.22mg、豚もも肉:1.01mg、生ハム:0.90mg、うなぎ(かば焼き):0.75mg、 たらこ(生):0.71mg、すじこ、いくら:0.42mg、鴨(生、皮なし):0.40、鯉(煮): 0.37mg
B2:豚レバー:3,60mg、牛レバー:3.00mg、鶏レバー:1.80mg、鶏はつ(生):1.10mg、い かなご(生):0.81mg、うなぎ(肝):0.75mg、うなぎ(かば焼き):0.74mg、うずら卵 (生):0.72mg、鴨(生、皮なし):0.69mg、さば(開き干し):0.59mg、糸引き納豆: 0.56mg、
B6:にんにく:1.50mg、ピスタチオ(炒り、味付):1.22mg、みなみまぐろ(赤肉、生): 1.08mg、バナナ(乾):1.04mg、びん長まぐろ(生):0.94mg、かつお(生):0.76mg、う るめいわし(丸干し):0.68mg、鶏(ひき肉、生):0.68mg
B12:しじみ(生):62.4mg、赤貝(生):59.2mg、すじこ:53.9mg、牛レバー:52.8mg、 あさり(生):52.4mg、ほっき貝(生):47.5mg、鶏レバー:44.4mg、あんこうの肝 (生):39.1mg
C:アセロラ:1700mg、グアバ:220mg、赤ピーマン(油いため):180mg、黄ピーマン (油いため):160mg、芽キャベツ(生):160mg、ブロッコリー(生):120mg、かぶ (葉、生):82mg、ケール(葉、生):81mg、からしな(塩漬):80mg、青ピーマン(油い ため):79mg、からしめんたいこ:76mg、にがうり(ゴーヤ)(油いため):75mg、甘柿 (生):70mg、キウイ(生):69mg、レッドキャベツ(生):68mg
D:あんこうの肝(生):110.0mg、うまづらはぎ(味付開き干し):69.0mg、しらす干 し(半乾燥):61.0mg、身欠きにしん:50.0mg、まいわし(丸干し):50.0mg、すじこ: 47.0mg、かわはぎ(生):43.0mg、きくらげ(ゆで):39.4mg、しろ鮭(焼き):39.4mg
E(αトコフェノール):せん茶:64.9mg、ひまわり油:38.7mg、アーモンド(乾):31.0mg、 抹茶:28.1mg、あんこうの肝(生):13.8mg、すじこ:10.6mg、落花生(炒り):10.6mg、 紅茶:9.8mg、オイルサ-ディン:8.2mg、たらこ(焼き):8.1mg、もろへいや(生): 6.5mg、うなぎ(白焼き):5.3mg、つくし:4.9mg、
P:ビタミンPは日本では「ビタミン様物質」などと呼ばれており、「フラボノイド」や「ヘ 34
スペリジン」の名で知られています。ビタミンPにはビタミンCの作用を促進させる働きがあ ります。ピーマンやパプリカを熱してもビタミンCが破壊されにくいのは、ビタミンPを含ん でいるからです。かんきつ類、ぶどう、さくらんぼ、ブルーベリー、いちご等の果実、ならび に緑茶はビタミンPの含有量が高い食品です。
ヨウ素
まこんぶ(素干し):240000μg、ひじき(干し):47000μg、あまのり(素干し):2800 μg、わかめ(水もどし):1900μg、ところてん:240μg、あわび:180μg、おきなわもず く(塩ぬき):140μg、うずら卵(生):140μg、さざえ:97μg、生いもこんにゃく:93μ g、牡蠣(なま):73μg、卵黄(生):50μg、
一般的に「日本人は海産物を多く食するからヨウ素の摂取量は不足していない」と言われてい ます。しかし、海産物の中にもヨウ素の含有量が比較的少ないものがあります。以下にヨウ素 が30μg/100g以下の魚介類(生の状態)の例を記載します:まぐろ類、あなご、ぶり、さん ま、まさば、まあじ、かつお、まいわし、わかさぎ、めかじき、あゆ等
(ペクチン以外の含有量は日本政府文部科学省の食品成分データベースを参考にしています)
まだらやすけとうだらはヨウ素を豊富に含んでいますが、放射性物質が比較的蓄積しやすい魚 類です。
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