事故によって電離放射線に晒されたこどものゲノムへのダメージ:文献の論評
タイトル:事故によって電離放射線に晒されたこどものゲノムへのダメージ:文献の論評
著者:フチクA., ブルンボルグG., ラセンR., イェジェクD., クヌドセンL. E., メルロD. F.
典拠:変異研究/突然変異研究レビュー、658(1-2)、111-123頁、2008年1月。
doi:10.1016/j.mrrev.2007.11.003
キーワード:子ども、電離放射線、環境、染色体異常アッセイ、小核検定法、チェルノブイリ
概要:過去10年間に、環境に存在する物理的、化学物質に対する子どもたちの被ばくのメカニズムの知識は飛躍的に増大した。子どもたちの健康に焦点を当てた最近のプロジェクトやプログラムの結果、環境における遺伝子毒に対する子どもの特定の脆弱性が明らかとなった。子どもたちにおける環境調査は主に大気汚染の健康への影響を調査するものだが、放射線被ばくの影響はより多くの注目に値する。放射線に被ばくした子どものゲノム損傷に関する主な情報源は1986年のチェルノブイリ原発事故後に実施された諸調査である。本レビューで取り扱うのは、環境の中で電離放射線に晒された子どもたちにおけるゲノム損傷を分析する論文から収集したデータである。チェルノブイリ事故、核実験、環境放射線汚染および室内事故後に行われた研究からの証拠は概して、参照先の子どもたちにおけるよりも被ばくした子どもたちにおいて、一貫して増加する染色体異常および小核頻度を示している。
この分野における今後の研究は以下の情報を提供する内容に集中するべきである。(a)低線量の放射線による子どもたちへの影響、(b)低線量の放射線への被ばく、および食料、水や空気からの化学物質の組み合わせによる子どもへの影響、(c)幼児期被ばくによる特定の影響(水からの放射性同位体、家庭におけるラドン)。ゲノム損傷に対する適応応答の発生への放射化学的環境の影響の可能性についても特別な配慮を与えるべきである。対話型データベースが細胞遺伝学的データ、幼年期がん登録データおよび環境汚染に関する情報の統合を促すために開発されるべきである。全体的な目的は、放射線被ばくの早期および後日の健康への影響に関するより優れた知識によって、時機にかなった効率的な予防措置を導入することである。
URL:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1383574207000634