カテゴリー「遺伝学/遺伝子突然変異」
タイトル:慢性的にチェルノブイリ放射性降下物に曝露している小型哺乳類における放射線損傷の世代間蓄積
著者:リャボコンN. I., ゴンチャロヴァR. I.
典拠:Radiation and Environmental Biophysics、2006年9月、45巻、3号、167-177頁。
DOI: 10.1007/s00411-006-0054-3
キーワード:放射線、蓄積、哺乳類、チェルノブイリ放射性降下物
概要:本調査の目的は、チェルノブイリ事故後10年間、22世代に渡って電離放射線の低線量に慢性的に被ばくしてきたモデル哺乳動物種であるハタネズミ(Clethrionomys glareolus, Schreber)の自然の個体群における生物学的損傷の長期的発展の分析である。生物学的エンドポイントの時間経過(骨髄細胞や胚性致死性染色体異常)を、放射性核種の地上沈着が異なるベラルーシの複数のモニタリングサイトに住む研究対象の個体群における外部および内部被ばくからの全身吸収線量率の時間経過と比較した。染色体異常の収率、そしてより低い程度の胚死亡率は用量依存的様式においてモニタリング領域の放射性核種汚染と関連していた。低線量率の照射下における生物学的損傷の長期的発展の主な特徴として、染色体異常レベルの恒久的上昇と胚致死頻度の増加が22世代に渡って見られた。このことは、同期間に約2.5〜3年の半減時間があると共に全身吸収線量率は指数関数的に減少するので生物学的損傷は次第に消えるという仮説とは対照的である。さらに妊娠したメスを捕獲し、汚染のない実験室条件下でその子どもたちを育てたが、それらも同様の高いレベルの染色体異常を示した。したがって、観察された細胞と全身作用は、各動物個体の被ばくに起因する生物学的損傷と共に、遺伝的および/またはエピジェネティックな経路を介した前世代の慢性的な低線量率被ばくによる損害の世代間伝送および蓄積を反映しているものと考えられる。また調査した個体群における累積伝染損傷のレベルは、慢性曝露の今後の減少および選択プロセスの結果として将来的には減少すると考えられる。
URL:http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00411-006-0054-3
タイトル:チェルノブイリ事故後慢性持続性低線量電離放射線に曝露したウクライナの患者の腎明細胞癌における微小血管密度は高い
著者:ロマネンコA. M., ルイズ・サウリA., モレル・クアドレニーL., ヴァレンシアG., ヴォジャノフA. F., ロムバート・ボッシュA.
典拠:Virchows Archiv、2012年6月、460巻、6号、611-619頁。
DOI: 10.1007/s00428-012-1243-x
キーワード:従来の腎細胞癌、電離放射線、血管新生、微小血管密度、CD31抗体
概要:チェルノブイリ事故後25年間、ウクライナにおける悪性腎腫瘍の罹患率は全人口10万人につき4.7人から10.7人に増加した。本グループの近年の研究では、放射能汚染地域に継続的に居住しているウクライナ人患者における罹患率、腎細胞癌(RCCs)の攻撃性、および増殖活性、特に腎明細胞癌(CCRCC)の増加は、いわゆる「慢性持続性低線量電離放射線」(CPLDIR)曝露の影響による特定の分子の変化によって説明しうることが分かった。本研究の目的は、ウクライナのチェルノブイリ事故後137Csによって汚染された地域に20年以上居住する患者におけるCPLDIRに関連するCCRCC発がんにおける血管新生の役割を検証することである。106 CCRCsのパラフィン包埋標本について、統制ケースをスペイン人患者の18の腫瘍(第1グループ)とし、放射能汚染されていない、いわゆるクリーン地域のウクライナ人患者の25の腫瘍(第2グループ)、そして放射能汚染地域のウクライナ人患者の63の腫瘍(第3グループ)について調査した。
URL:http://link.springer.com/article/10.1007/s00428-012-1243-x
タイトル:事故後1年目にチェルノブイリ地方でみられた農作物への細胞遺伝学的影響
著者:ゲラスキンS. A., ディカレフV. G., ジャブリツカヤY. Ya., オウダロヴァA. A., スピリンY. V.
典拠:Всероссийский Научно-Исследовательский Институт Сельскохозяйственной Радиологии и Агроэкологии(全ロシア農業放射線・アグロエコロジー科学研究所)
キーワード:細胞遺伝学的効果、放射線、農業植物、事故後1年目、ベラルーシ
概要:1986年のチェルノブイリ原発事故の放射性降下物による放射能汚染の農作物への細胞遺伝学的影響に関する研究
URL:http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/reports/kr79/kr79pdf/Geraskin.pdf
タイトル:チェルノブイリ原子力発電所30キロ立入禁止区域の住民の血リンパ球における染色体異常
著者:ベズドロブナL., ツィガノクT., ロマノヴァO., タラセンコL., トリシンV., クリムキナL.
典拠:ウクライナ国立科学アカデミー原子力研究所
キーワード:リンパ球、チェルノブイリ立入禁止区域、染色体異常、ウクライナ
概要:1998‐1999年、チェルノブイリ原子力発電所30キロ立入禁止区域の33名の自己移住者とキエフ州ヤホチン地区の村落の住民31名の比較細胞遺伝学的調査を実施した。
URL:http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/reports/kr79/kr79pdf/Bezdrobna.pdf”>http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/reports/kr79/kr79pdf/Bezdrobna.pdf
タイトル:事故による電離放射線被ばく後のヒトリンパ球における染色体異常の分析
著者:スニギリョヴァG., シェフチェンコV.
典拠:ロシア・レントゲン・放射線科学センター、MOH RF、N. I. バビロフ一般遺伝学研究所、RAS
キーワード:染色体、電離放射線、リクビダートル
概要:チェルノブイリ原発事故現場のリクビダートルにの細胞遺伝学的検査および染色体異常の頻度による照射線量再構築の結果分析。
URL:http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/reports/kr79/kr79pdf/Snigiryova.pdf
タイトル:電離放射線の影響:ヒトの血液リンパ球の細胞遺伝学的変化
著者: スニギレワ G.P.
典拠:論文 2009年モスクワ ВАК РФ 03.00.01
キーワード: 放射線生物学、セミパラチンスク核実験、テチャ川への放射線廃棄物投棄、チェルノブイリ原発事故
概要:ヒトの血液リンパ球への低線量の細胞遺伝学的影響の研究。それを電離放射線と健康への悪影響の算定のために利用できる可能性を模索。
URL: http://earthpapers.net/posledstviya-vozdeystviy-ioniziruyuschih-izlucheniy-tsitogeneticheskie-izmeneniya-v-limfotsitah-krovi-cheloveka
著者:DeWoody JA.
典拠:Mutat Res.、1999
概要:チェルノブイリ原子炉の近くに住む一部のげっ歯類は約80000ベクレル/グラムの内部134/137 Cs被爆濃度を有する。近年におけるいくつかの脊椎動物の遺伝学的研究は、チェルノブイリ事故の影響を受けた個体がコントロールに比べて高い変異率を示すことを報告しているが、いずれの研究もDNA配列の分析を含んでいない。
変異原生を個体の復元システムや淘汰との関連において研究する。
URL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10029670
著者: Robert J. Baker, Ronald A. Van Den Bussche, Amanda J. Wright, Lara E. Wiggins, Meredith J. Hamilton, Erin P. Reat, Michael H. Smith, Michael D. Lomakin and Ronald K. Chesser
典拠: Nature. 1996
概要:チェルノブイリ原発4号機近辺に生息する原住ハタネズミ群のミトコンドリアチトクロームβ遺伝子の塩基対置換率を推定した。本推定値は一般的な脊椎動物のミトコンドリアに見られるものよりも数百倍高く、4号機の事故がその地域の生物に測定(検出)可能な遺伝的影響を与えていることを示唆している。しかし、これらのDNAの変化にもかかわらず、ハタネズミ群はチェルノブイリ原子炉周辺の放射能汚染地域で繁殖を続けている。
URL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8614463
タイトル:ウクライナ、チェルノブイリの高放射線ゾーンのハタネズミにおける小核頻度
著者:ロジャースB. E., ベイカーR. J.
典拠:Environmental Toxicology and Chemistry、19巻、6号、1644-1648頁、2000年6月。
DOI: 10.1002/etc.5620190623
キーワード:小核試験、チェルノブイリ、放射線、ヨーロッパヤチネズミ、遺伝毒性
概要:ウクライナの立入禁止区域であるチェルノブイリの高放射線地域のヨーロッパヤチネズミ(ハタネズミ)の集団を1997年6月と1998年10月にサンプリングした。放射性セシウムの内部放射線量は8 rads/dの高さと測定された。ストロンチウムおよび周辺環境からのものと考えられる内部線量の全放射線量は15 ~ 20 rads/dと測定された。対照的に、立入禁止区域の外側の参照グループ中の個体は汚染登録から除外できるレベルと判定された。本調査では58の個体から血液サンプルを分析するために二重盲検法で小核試験を使用した。60万以上の多染性赤血球(PCEs) を獲得したが、放射線曝露されたハタネズミにおける小核のPCE頻度は未曝露のハタネズミにおける頻度に等しいという帰無仮説を棄却することはできなかった。本研究結果は、チェルノブイリ事故の放射性降下物に曝露したげっ歯類の小核の頻度が増加したという先行報告とは全く対照的なものであるが、その放射線量はここで報告したものより桁違いに低いものだった。こうした結果の差は放射線抵抗性と実験方法によって説明することができる。
URL:http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/etc.5620190623/abstract
タイトル:ウクライナ、チェルノブイリ地域の高度汚染サイトのClethrionomys glareolus(ヨーロッパヤチネズミ)の遺伝的多様性
著者:マトソンC. W., ロジャースB. E., チェザーR. K., ベイカーR. J.
典拠:Environmental Toxicology and Chemistry、19巻、8号、2130-2135頁、2000年8月。
DOI: 10.1002/etc.5620190824
キーワード:集団遺伝学、Clethrionomys、放射線、チェルノブイリ、進化毒性
概要:放射性サイトでは、少なくとも二つのメカニズムが与えられた種の個体群の遺伝的多様性に影響を及ぼしうる。放射線被曝によって増加した突然変異率が集団における遺伝的多様性の量を増大させることがある。また、環境の劣化によって悪化した集団の隘路が多様性の減少につながる可能性がある。これら二つの相反する力の間の関係は複雑である。この関係を解明するには、集団内の遺伝子マーカーの長期モニタリングが必要である。ウクライナ、チェルノブイリの最も汚染された地域に住むハタネズミ (Clethrionomys glareolus) の集団遺伝学上の基礎データを得るために、ミトコンドリアDNA調節領域の291塩基対の配列を決定した。ハタネズミをモデル系として選択したのは、チェルノブイリ立入禁止区域内で最高レベルのセシウム134、セシウム137、ストロンチウム90の内部線量を有していたためである。3つ地理サイトをサンプリングしたが、ひとつはオラノエの放射能汚染がほとんどない参照サイト(<2 Ci/km2)、あとは二つの高度汚染サイト、すなわちグリボケ湖と赤い森(共に1,000 Ci/km2)である。赤い森の集団の遺伝的多様性(0.722 ± 0.024) は、オレノエの参照サイト(0.615 ± 0.039)よりもかなり大きかったが、グリボケ湖の遺伝的多様性(0.677±0.068)は中間だった。結論としては、実験集団と参照集団の歴史的・人口統計学的特性に関する長期試験が、自然集団の遺伝に対する環境汚染物質の生物学的影響を理解するのに集団遺伝学を取り込むために求められる。
URL:http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/etc.5620190824/abstract