カテゴリー「甲状腺ガン」
タイトル:ロシア、トゥーラ州における子供と大人の甲状腺疾患の超音波検査
著者:パルシンV. S., 山下俊一、ツィプA. F., ナルコヴァN. P., タラソヴァG. P., イリインA. A.
典拠:国際会議シリーズ、1234、231-237頁、2002年5月。
デジタルオブジェクト識別子:10.1016/S0531-5131(01)00612-4
キーワード:甲状腺疾患、超音波スクリーニング、癌、チェルノブイリ
概要:36名の専門家からなる医療チームが、地上のセシウム137の汚染レベルが3.2から5.6 Ci/km2のロシアのトゥーラ地域に住む36,454名の子供と成人を検査した。超音波甲状腺スクリーニングの手順は医療とコンピュータのパートに分けられた。医療パートには、一人一人の甲状腺の超音波検査、甲状腺異常を持つ個人の超音波再検査、甲状腺の細針吸引生検、必要に応じて超音波ガイド下と採血や内分泌学者による身体検査、といった個々の甲状腺検査を通した登録が含まれた。「超音波スクリーニングのチャート」は超音波所見を要約し、ドキュメントを簡素化するために精緻化された。コンピュータベースの情報システムによって、データベースのメンテナンス、デジタル形式での甲状腺画像の保存、患者への検査結果の提供、保健統計データの取得が保証された。要約すると、5-9歳のグループでは甲状腺がんはまったく見られず、10-14歳のグループで0,013%、15-19歳のグループでは0,044%、20-29歳のグループでは0,091%、30-39歳のグループでは0,121%、40-49歳のグループでは0,553%、50-59歳のグループでは0,349%、甲状腺がんが見られた。
URL:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0531513101006124
タイトル:ゴメリ州(ベラルーシ)の健康なおよび甲状腺腫瘍の影響を受けた子どもたちのリンパ球細胞における遺伝学的損傷
著者:ロベルトB., ゲミグナニF., モリッゾC., ロリA., ロッシA., アントネッリA., ディ・プレトロG., (…) バラルディンM.
典拠:変異研究/変異誘発の基本と分子機構、405(1)、89-95頁、1998年8月。
デジタルオブジェクト識別子:10.1016/S0027-5107(98)00118-3
キーワード:染色体異常、リンパ球、子ども、甲状腺腫瘍、電離放射線、セシウム137、チェルノブイリ
概要:1994年の間、チェルノブイリの放射性降下物によって最も汚染された地域の一つであるゴメリ州の腫瘍の影響を受けた19名の子どもたちと健康な17名の子どもたちを、(1)尿中のセシウム137の存在、(2)循環リンパ球における染色体異常(CA)について調査した。彼らをイタリアのピサの健康な35名の子どもたちと比較した。ゴメリ州の健康な統制群に比べ、腫瘍の影響を受けた子どもたちの尿中にはセシウム137が有意に高いレベル(p < 0.05)で見られた。ピサの統制群の尿中には放射能は全く見られなかった。ゴメリの統制群と比較して、腫瘍の影響を受けた子どもたちにおいてはCAの頻度が有意に高かったが、ゴメリの統制群とピサの統制群の間に有意な差は見られなかった。しかし二動原体染色体は、ピサの統制群( 細胞)に比べて、ゴメリの腫瘍の影響を受けた子どもたちおよび健康な子どもたちの双方において有意に高い比率(p < 0.01)で見られた。重回帰分析によって、非中心フラグメント、二動原体とリング染色体を持つ細胞の割合が、彼らの尿中に排泄されたセシウム137の量と有意に相関している(p < 0.05)ことが示された。これらの結果が示しているのは、ゴメリ州の子どもたちの放射性核種への被ばくがいまだ続いており、そのことによって線量効果関係の調査が可能となったということである。
URL:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0027510798001183
タイトル:放射線関連の甲状腺腫瘍におけるミトコンドリアDNAの分子の特徴
著者:ロゴウノヴィッチT. I., サセンコV. A., 清水・吉田有希、アブロシモフA. Yu., ルシニコフE. F., ロウミャンツェフP. O., 大津留晶、…山下俊一
典拠:国際会議シリーズ、1258、163-168頁、2003年11月。
デジタルオブジェクト識別子:10.1016/S0531-5131(03)01151-8
キーボード:ミトコンドリアDNA、大規模欠失、一般的な削除、放射線関連甲状腺腫瘍
概要:ロシアのチェルノブイリの放射能汚染地域にかつて住んでいて甲状腺乳頭癌(PTC)および濾胞性腺腫(FA)を患っている成人患者、および日本のPTC患者の統制群の腫瘍および正常な甲状腺組織からのDNA試料を、ミトコンドリアDNA(mtDNA)含有量、共通の欠失(CD)および大規模欠失(LSD)の有病率について定量的に分析した。ほとんどの腫瘍組織ではmtDNAのレベルが上昇していた。調査された全ての試料においてCDおよびLSDが検出された。ミトコンドリアDNAにおけるLSDの量はほとんどの腫瘍組織において上昇していたが、特に試料の放射線関連グループにおいて顕著だった。またこのグループでは、PTCとFAの両方の腫瘍組織において、LSDの数と相対的なmtDNA含有量のレベルの間に高度に有意な正の相関があった。これとは対照的に、散発PTCではこの相関関係は発生しなかった。正常な組織試料は、相対的なミトコンドリアDNA含有量への負の相関に対して統計的に有意な傾向を示した。このように、LSDレベルおよびミトコンドリアDNA含有量の測定は、放射線関連および自発甲状腺腫瘍の分子を区別するために有用といえる。
URL:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0531513103011518
タイトル:内部に沈着したチェルノブイリ原子炉事故による放射性降下物
著者:シュレンカーR. A.
典拠:会議:米国原子力学会と原子力産業協会の合同会議、ロサンゼルス、1987年1月。
キーワード:
概要:本研究では、チェルノブイリ原子炉事故時に東ヨーロッパ(主にポーランド)に居住していた、もしくは旅行者として旅をしていた被験者約100名を対象としたが、1986年6月中旬には甲状腺においてヨウ素131は容易に検出可能であり、事故が起こってから9‐10週間後の7月初めになっても検出可能であった。1986年4月26日に東ヨーロッパにいてヨウ素131が検出された42名の被験者においては、甲状腺の放射能の中央値は測定時に1.4 nCiであった。甲状腺における単一指数保持機能および8日間という半減期を考慮しつつ、4月26日に遡って推定すると放射能の中央値は42 nCiになる。その度数分布は対数正規分布に似ている。推定される放射能量は大体2~1200nCiの間である。これらの観察された内部放射能から派生するリスクレベルおよび著者の保守的な線量仮定は、事故後数か月間に一般紙で発表されたリスクレベルより10倍ほど低い。こうしたことにより、内部放射能のリスク推定を直接の観察に基づくことの重要性が明らかになった。
URL:http://www.osti.gov/bridge/product.biblio.jsp?query_id=2&page=0&osti_id=5689382
タイトル:final_chernob_report_2011.pdf 原子炉災害から25年後のチェルノブイリの健康影響
著者:プフルークバイルS., ポーリッツH., クラウセンA., シュミッツ・フォイエルハーケI.
典拠:チェルノブイリの健康影響、IPPNW・GFSレポート、2011年4月、 [PDF-927K]。
キーワード:
概要:…43.5。甲状腺がんとその他の疾病…44.6.1 チェルノブイリ地域…リクビダートルにおける甲状腺がんを含む…。14. チェルノブイリ後、乳児死亡率…
URL:http://www.nirs.org/reactorwatch/accidents/chernob_report2011webippnw.pdf
タイトル:ブリャンスク州の疫学的健康調査のためのコホートメンバーにおける小児期の甲状腺線量の分布
著者:コンスタンチノフY. O., ブルックG. Y., エルショフE. B., レベヂェフO. V.
典拠:国際会議シリーズ、1234、307-319頁、307-319頁、2002年5月。
デジタルオブジェクト識別子:10.1016/S0531-5131(01)00620-3
キーワード:チェルノブイリ、線量測定、ヨウ素131、甲状腺
概要:放射線量の再構築を伴う長期医学的フォローアップを行うことを目的として、チェルノブイリ事故の後ロシアで最も汚染された地域の住民の中から被験者のコホートが選ばれた(ブリャンスク州の西の地区)。コホートは、事故時に10歳以下だった1065名の被験者で構成された。チェルノブイリ笹川保健医療協力プロジェクトにおいて彼らのほとんどの健康状態が調べられた。プロジェクトの調査結果で主に甲状腺異常が見られたため、被験者の選択は甲状腺への放射線量の妥当な推定値に基づいて行われた。甲状腺線量を推定するのに、甲状腺におけるヨウ素131の直接測定によるデータと1986年5月における個々の食習慣に関するアンケートデータが用いられた。甲状腺放射性ヨウ素を測定していなかった者の用量を含め、合理的な近似値が、利用可能なデータから個々の用量を再構築するのに適用された、コホートメンバーにおける甲状腺の内部放射線量の分布が得られた。特定の被験者の個人線量が推定されたものの、ある程度の精度不足は否めなかった。しかし、200 mGy以下から2 Gy以上という被験者における投与間隔の広い分布は、放射線疫学コホート研究にとっては許容可能なアプローチであると思われる。
URL:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0531513101006203
タイトル:ウクライナおよびデンマークにおける甲状腺および尿中のヨウ素129
著者:ホウX., マレンチェコA. F., クセラJ., ダルゴーH., ニールセンS. P.
典拠:全体環境科学、302(1-3)、63-73頁、2003年1月。
デジタルオブジェクト識別子:10.1016/S0048-9697(02)00321-2
キーワード:ヨウ素129、甲状腺、尿、ウクライナ、デンマーク、チェルノブイリ事故
概要:ベラルーシのゴメリのヒト甲状腺、デンマークのユトランドの羊の甲状腺とジーランドのヒトの尿におけるヨウ素129/127の濃度を分析した。ゴメリのヒト甲状腺におけるヨウ素129/127比は2.65–11.0×10−9、平均7.21×10−9であり、アジアや南米のもの(10-10)より一桁高かったが、西ヨーロッパにおけるもの(10-8)よりは有意に低かった。ヒト甲状腺におけるヨウ素129/127比と対象者の年齢との間に弱い負の相関(P<0.05)が見られたのはゴメリであった。デンマークのユトランドの羊の甲状腺におけるヨウ素129/127比平均は1.81×10−7で、南半球およびアジアのものに比べて二桁高かった。またそれは1984年前に他の西ヨーロッパ諸国で観察されたもの、およびにゴメリのヒト甲状腺におけるものよりも同様に有意に高かった。ユトランドの甲状腺における高レベルのヨウ素129は、フランスおよび英国における再処理工場からの放出による。デンマークのジーランドのヒトの尿におけるヨウ素129/127比は0.86–2.86×10−8だった。甲状腺のヨウ素129への被ばくを評価するために、尿におけるヨウ素129を使用する可能性を検討した。
URL:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0048969702003212
タイトル:子どもおよびとその母親に対する放射線被ばくリスク
著者:ペトロヴァA.
典拠:環境衛生百科、2011年1月。
ISBN:9780444522726
キーワード:子ども、母親、放射線、リスク
概要:子どもおよびその母親の健康に対する電離および非電離放射線の影響については実際問題として懸念されている。子どもや母親への放射線被ばくに関するリスクの大きさとタイプについて、そのような被ばくの健康影響を防止するために決定すべきである。発育期の生物は放射線により敏感であり、放射線誘発性病変の発達を受けやすい。集中的な細胞増殖、細胞分化、細胞移動を特徴とする生前発育は特に放射線被ばくに敏感である。…ヒトの疫学研究が示しているのは、ヨーロッパ諸国におけるチェルノブイリ原発事故以降の、死産傾向、先天性欠損症、甲状腺がんおよび乳児白血病の増加である。…
URL:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/B9780444522726002129
タイトル:ヒトにおける放射線誘発甲状腺癌の分子解析
著者:ラーベスH. M.
Reference: International Congress Series, 1236, p.207-215, Jul 2002
典拠:国際会議シリーズ、1236、207-215頁、2002年7月。
デジタルオブジェクト識別子:10.1016/S0531-5131(01)00750-6
キーワード:甲状腺乳頭癌、遺伝子再構成、RET、NTRK1、遺伝子型/表現型の相関関係
概要:放射線被曝と甲状腺癌の発達の相関関係は特に小児において見られる。チェルノブイリ原子炉事故後の放射線誘発甲状腺乳頭癌(PTC)の大規模コホートに関する最近の研究では、基本的な遺伝的変化の一般的なタイプが示された。NTRK1を含むいくつかの再配列の他に、受容体チロシンキナーゼ(TK)c-RETの再配列の高い有病率が観察された。PTCにおける放射線誘発RETの再配列は、H4遺伝子(RET/ PTC1)またはELE1(ARA70)遺伝子(RET/ PTC3)との融合体によってもっとも頻繁に構成されている。どちらの融合も第10染色体上のバランスのとれたパラセントリックな反転によって形成されている。ELE1/ RET再編成における融合遺伝子の解析により、介在性のELE1のエクソン、RETのエクソン11およびイントロン11において、遺伝子のこれらの部分の大幅なクラスタリングなしにDNA二重鎖切断が約2.3kbの距離に広がることが明らかになった。トポイソメラーゼI部位がすべてのブレークポイントにおいて、または近接して見られたことは、DNA鎖切断または反転の構造におけるこの酵素の役割を示している。遺伝子は配列相同性が短く、また短くて直接あるいは逆方向反復(マイクロホモロジー媒介DNAエンドが参加)の領域において融合する。PTC症例の少数は、RIα、GOLGA2、HTIF、HTIFホモログ、RFG8、ELKS、KTN1および5′-融合遺伝子といったPCM-1などのRET再配列の新規タイプを含んでいる。これらの新規なタイプの遺伝子融合は染色体間の転座によって形成されている。再配列のこれらの稀なタイプの形成は、散発性PTCではほとんど見られないことから、放射線に高度に関連していると考えられる。あらゆるRET遺伝子融合はRETの機能同様に作用するように見える。RET TK活性の厳密な生理学的制御は、二量体化能を有するコイルドコイルドメインを含む遺伝子の5’が融合したパーツによる構成的活性化を介して中断されている。正常な状態における甲状腺細胞におけるRETの発現はRET TK活性を欠き、クローナルな拡大と影響を受けた細胞の初期侵入を明らかに引き起こす。RET融合遺伝子は、そのうちのいくつかは転写コアクチベーターであるが、腫瘍のとその臨床経過のための独特の表現型の重要な決定的要素である。これは、RET融合遺伝子としてのELE1を伴うRET/ PTC3再編成の中で最も重要である。このタイプの再配列はPTCの固体バリアントの表現型、そして急速な腫瘍の発生および初期のリンパ節転移をより頻繁にもたらす。現在に至るまで、RET再配列よりもPTCでより頻繁に観察されている他の遺伝子異常はなく、このことは、RETの再配置がPTCの発達における放射線の歴史の遺伝子マーカーの障害を表していることを示している。
URL:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0531513101007506
タイトル:第8章 放射線誘発発がんのメカニズム:甲状腺モデル
著者:ニキフォロフY. E., フェイギンJ. A.
典拠:分子細胞内分泌学の進歩、2、169-196頁、1998年1月。
デジタルオブジェクト識別子:10.1016/S1569-2566(98)80016-1
キーワード:放射線の生物学的影響、乳頭がん、子どもたち
概要:放射線の生物学的影響に関する現在の情報に基づくと、被ばくした子どもたちにおいて乳頭がんが発生するという遺伝的事象とはつまるところ、発癌配列(すなわちret/PTC)に対するDNA損傷によるか、影響を受けた細胞のゲノムが原因不明のメカニズムによって不安定化して起こった末の事象といえる。チェルノブイリにおける放射線誘発性乳頭腫は特定の「署名」をもった遺伝的特徴、すなわち有病率の高いRET/ PTC再配列の特定の形態を持つことが現在では明らかとなっている。これによって、甲状腺細胞における放射線によって誘発されたDNA損傷に関する将来的研究の終着点の目途が立ったといえ、これらの腫瘍の成り立ちについてよりターゲットを絞った仮説を立てることが可能になったといえよう。甲状腺への被ばくは吸収された短命放射性ヨウ素による内部放射線に、より少ない程度に、ガンマ線の貫通に起因する。甲状腺がんの出現が記録されたのは被ばく後10年のことで、被爆した250名の間で34年間行われた注意深いモニタリングにおいて甲状腺乳頭がんが7例、濾胞性甲状腺がんが1例、潜在性甲状腺がんが7例報告された。
URL:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1569256698800161